当院における上水道飲料水蛇口の抗酸菌生息調査と院内感染機会の検討
名古屋市総合リハビリセンター整形外科
大谷 真史
関節リウマチ(以下RA)は様々な遺伝的・環境的要因により全身の関節に多発性の炎症が生じ、寛解・憎悪を繰り返しながら骨・軟骨組織を破壊する難治性自己免疫疾患の一つである。近年、種々の生物学的治療薬の開発が進みRAの疾患コントロールは飛躍的に向上し寛解導入のみならず根治までも期待可能になりつつある。しかしながら生物学的治療薬はその作用が強力な故に、患者本来のもつ免疫能を低下させることから感染症に対する抵抗力を低下させ臨床的に大きな問題となることがある。特に結核および非定型抗酸菌感染症は臨床的にも難治であり注意の必要な感染症である。結核はヒト-ヒト感染症であることから臨床的にも診断・治療が確立しているが、非定型抗酸菌症については未だ研究途上の領域である。
関節リウマチの生物学的製剤による治療を行う際に合併症として抗酸菌感染症があり、感染源として、上水道蛇口に注目して抗酸菌の生息状況を調査した。
上水道蛇口の擦過により検体を採取。グラム染色及び抗酸菌染色にて菌体の確認を、同時にマイコバクテリア属菌を検出するPCRおよび小川培地に塗布して、生菌の検出を行なった。
当院30カ所の検体をグラム染色及び抗酸菌染色したが、菌体を確認できなかった。PCRでは、増幅バンドが2カ所から確認され、そのうち1カ所では再現性があった。小川培地へ接種では、12週間経過してもコロニー形成は認めなかった。岐阜県下医療系大学の学内では、10カ所の検体のうち2カ所から、遺伝子の検出と小川培地でコロニー形成を認めたので、本研究の結果は正当性があると判断した。
当院上水道蛇口の生息調査では、抗酸菌の生存がないことから、日常の掃除時の清浄維持行動がよいと考えられる。
検体試料採取水道蛇口リスト(1回目、平成24年5月11日) 計60カ所
- 外来(外)西
- 外来(外)東
- 外来(外)新
- 処置室(南)
- 処置室(北)
- 外来(内)東
- 外来(内)西
- 会計水道
- トイレ玄関わき男南
- トイレ玄関わき男北
- トイレ玄関わき女北
- トイレ玄関わき女南
- 障害者用男
- 障害者用女
- 薬局(西)
- 薬局(東)
- リハ室横トイレ西
- リハ室横トイレ東
- 生理検査室
- 血液検査東南
- 血液検査東北
- 血液検査西
- 採尿室
- 放射線科
- OT室北
- OT室南
- OT室木工
- OT室事務室
- PT室北
- PT室南
- PT控室
- PT室トイレ西
- PT室トイレ東
- PT室事務室
- PTADL室北
- PTADL室南
- 2F NS
- 2F 奥
- 処置室東
- 処置室西
- 食堂東
- 2階病棟東
- 2階病棟東
- 2階病棟東
- 2階病棟西
- 洗面 南
- 洗面 南
- 洗面 南
- 洗面 北
- トイレ男
- 配セン室
- 中材東
- 中材西‐東
- 中材西‐西
- OP室NS控室
- PO室手洗い東
- PO室手洗い中
- PO室手洗い西
- 心理前トイレ東
- 心理前トイレ西
検体試料採取蛇口リスト(2回目;平成24年8月29日) 計30カ所
- 外科1番診察室
- 外科3番診察室
- 化学療法室
- 外科10診察室
- 処置室
- 生理検査室
- 血液・生化学検査室(西)
- 血液・生化学検査室(東)
- 採血室
- 1階トイレ(西)玄関横
- 薬局
- 1階トイレ(東)玄関横
- OT室(金工木工室)
- OT室(西)
- PT室(北)
- PT室(南)
- PT室(ADL室)
- 第2W NSステーション
- 第2W 処置室
- 第2W 洗面
- 第2W 洗濯室
- 第2W トイレ
- 第1W NSステーション
- 第1W トイレ洗面
- 第1W 食堂手洗い
- 2階16班トイレ
- 4階トイレ
- 職員休憩洗面
- 職員休憩ポット
- 医局洗面
PCR試料
試料B | 2.0 μL |
---|---|
10X Taq Buffer | 1.0 μM |
25mM dNTP | 0.8 μL |
10mM/μL primer F | 0.5 μL |
10mM/μL primer R | 0.5 μL |
EX Taq (Takara) | 0.25 μL |
ddH2O | 4.95 μL |
Total volume | 10 μL |
PCR反応サイクル
温度 | 時間 | サイクル数 |
---|---|---|
98℃ | 1 min | 1回 |
98℃ | 10sec | 30 回 |
55℃ | 30sec | 30 回 |
72℃ | 1min | 30 回 |
72℃ | 5min | 1回 |