高次脳機能障害者の認知・判断特性を考慮した運転適性評価法の検討

ページ番号1000604  更新日 平成30年3月30日 印刷 

名古屋市総合リハビリテーションセンター 作業療法科
田中 創

名古屋市総合リハビリテーションセンターでは、過去5年間に計404名を対象にドライビングシミュレーター(Driving Simulator:DS)を用いた運転評価を実施しました。この内、明らかな麻痺のない高次脳機能障害者は全体の60%に達しています。平成25年5月にはDS機械が更新されましたが、健常者基準値が存在しない状況でした。そこで、本研究ではDSにおける健常者基準値の設定を行うとともに、注意配分・複数作業検査や飛び出しに対するブレーキ反応課題を含む運転操作器を新たに導入することにより、障害特性を考慮した標準的な運転適性評価法を検討したいと考えました。
日常的に自動車を運転している健常者に対して、運転シミュレーターを用いた走行実験を行い、4つの危険箇所を含む模擬運転適性検査の健常者基準値を設定しました。健常者18名の総減点数の平均は5.27点(±2.20)であり、健常者平均から1標準偏差の範囲内にあたる群を正常域、1標準偏差から2標準偏差内にあたる群を境界域、2標準偏差範囲外にあたる群を障害域と設定しました。
高次脳機能障害者12名を障害群と正常群に分類し注意機能検査結果を比較したところ、障害群はTrail-Making-Test(TMT-B)の所要時間が有意に長くなりました。TMT-Bは、注意の配分やワーキングメモリーを反映する指標であり、これらの機能低下が危険場面での対応の遅れに影響していることが明らかになりました。