正常圧水頭症患者における髄液中水分子のターンオーバー解析

ページ番号1001717  更新日 令和2年6月26日 印刷 

名古屋市立大学大学院 医学研究科 脳神経外科学 教授
名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院 脳神経外科
間瀬 光人

水分子の移動・拡散についてPETを用いて測定し、頭蓋脊髄腔の水のターンオーバーの観点から検討することにより、正常および正常圧水頭症患者の頭蓋内の水の起源と部位別代謝を明らかにし、正常および病的状態の髄液産生吸収機構について明らかにするため、正常ボランティア9名と正常圧水頭症患者2名を対象とし、H215O静注後15分間のPETデータ収集を行った。
灰白質、白質、基底核の相対的放射線活性ピークはそれぞれ内頚動脈の53%(22.5秒後)、43%(97.5 秒後)、55%(22.5秒後)であった。いずれもそのピーク後は徐々に低下した。これに対し側脳室内髄液の相対的放射線活性は測定終了まで増加を続け、12分後に脳全体(灰白質+白質+基底核の平均)相対的放射線活性の38%に達した。正常圧水頭症患者では脳室内の相対的放射線活性が術前には正常例よりも少なく、シャント術後に増加する傾向が見られた。
今回の検討で水は灰白質から白質へ移動し、脳室内への水の動きもきわめて速いことが再現性を持って示された。またシャント術によって脳室内への水の拡散が速まることが示唆された。