脂肪動員因子Zn-α2-glycoprotein(ZAG)測定系の確立とメタボリック症候群治療への臨床応用

ページ番号1000599  更新日 平成30年3月30日 印刷 

名古屋市総合リハビリテーションセンター整形外科部長
荻久保 修

【学術的背景】
Zn-α2-glycoprotein(ZAG)は、1964年にBurgiらによりヒト血漿中に機能不詳で見出された分子量38000~41000の糖タンパク質である。本糖タンパク質は血漿のみでなく精液、脳脊髄液など種々の体液より検出され種々の機能をもつことが想定されていたが、その機能は長い間不詳であった。本糖タンパク質は多機能血漿糖タンパク質として考えられており、細胞接着活性があること、腎炎起因性糖タンパク質として働くこと、免疫応答との関わりを持つことなどが報告されている。また最近になって本糖タンパク質の新たな生理機能として、悪性腫瘍時のカヘキシア(体重減少)における脂肪減少とZAGとの関連がマウスによる実験で証明され、脂質動員因子として機能することが報告され脂肪代謝との関連性からも注目されている。
【研究目的】
ZAG定量的測定系の確立
ZAG測定系はいまだ確立しておらず、本研究ではZAG定量的測定系(ELISA法)を確立し、同時に作製したモノクローナル抗体のエピトープ解析を目的とした。

【方法】

  1. 抗ZAG抗体(ポリクローナル抗体・モノクローナル抗体)の確立
    抗体作製に必要なZAG標準物質はヒト精漿中より単離生精製し獲得した。ポリクローナル抗体は標準物質を用いてウサギに免疫し、その後血清を採取し抗ZAGポリクローナル抗体を精製分離した。
    モノクローナル抗体は、精製ZAGタンパク質を抗原としマウス皮下に5回の免疫を2週間毎に行った後、脾臓から免疫細胞を単離してハイブリドーマ作成し獲得した。
  2. ELISA測定系の確立
    抗ZAGポリクローナル抗体を固定化抗体として用いてELISA測定系を確立した。それぞれの抗体同士の相性を確認しながら、最も相性の良い組み合わせでELISA系を構築した。
  3. モノクローナル抗体のエピトープ解析
    ヒトZAG遺伝子を単離後、大腸菌に遺伝子導入した。発現タンパク質は、α1、α2、α3ドメイン、MHCドメインおよびZAGタンパク質全長であった。これらの蛋白資質を用いてモノクローナル抗体のエピトープ解析を行い本タンパク質の機能解析を行った。

【結果】
ZAG定量的測定系の確立と分子内エピトープの解析
ELISA法を用いたZAGタンパク質測定系においては、精製ZAGタンパク質を用いた実験より0.05μg/mlから0.7μg/mlまでの範囲で直線性を示した。
本ELISA法に用いた精製モノクローナル抗体のエピトープ解析を行った。
確立した7種類のモノクローナル抗体のうち、2種類は、α3ドメインを認識していた。また、3種類はMHCドメインを認識しており、5種類については認識領域を確定することができた。

  PcAb M01 M02 M03 M04 M05 M06 M08
ZAG + + + + + + + +
MHC + - - - - + + +
α3 + + - - + - - -
α2 + - - - - - - -
α1 - - - - - - - -