組織再生応用に向けてのヒト線維芽細胞の分化特性解析

ページ番号1001722  更新日 令和2年6月26日 印刷 

名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院 整形外科
荻久保 修

本研究課題ではまず、臨床検体より得られるヒト脂肪組織より間葉系幹細胞の分離・培養を行った。得られた間葉系幹細胞を用いて、平成28年度の樹立したクローン化培養技術を用いてクローン化し、遺伝子発現プロファイリングから各クローンの脂肪、骨、及び軟骨系への分化能を検証した。

樹立した各間葉系幹細胞クローンの純度検定を行い、得られた細胞が間葉系の細胞であることを確認した。次に、細胞増殖、コロニー形成能の解析を行った結果、強い増殖&コロニー形成を示すType A、中程度の増殖&コロニー形成を示すType B、ほとんど増殖&コロニー形成をしないType Cに分類された。さらに各タイプのコロニーから第二世代のクローンを分離したところ、それぞれから、3つのTypeのクローンが出現したことから、クローン変換が可能であることが示された。

次に低酸素培養条件下で得られた間葉系幹細胞のクローン15種のうち、増殖能が低いType Cを除いた12種を用いて、遺伝子発現比較解析を行った。その結果、脂肪、骨、軟骨への分化能が各クローンによって大きく異なることが示された。また、マトリクス分解酵素遺伝子の発現レベルも各クローンによって大きく異なることが示されたが、脂肪、骨、軟骨への分化能との相関は認められなかった。

以上の結果より、患者組織より得られた間葉系幹細胞もまた不均一な特性を持つ細胞集団であること、さらには、脂肪、骨、軟骨への分化能が各クローンによって大きく異なることが明らかとなった。