タウプローブを用いたPETによる神経変性疾患研究その2
名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院 第2神経内科
堀本 佳彦
タウはアルツハイマー病やピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症などの神経変性疾患において患者脳に蓄積しており、その有無は病理診断に重要な役割を果たす。神経変性疾患患者の多くは、死後の病理解剖でようやく診断が確定する。存命中の患者脳でタウ蓄積の有無が確認できれば、臨床診断の確実性が増し、治療上も非常に有用である。国内では現在、PBB3やTHK-5351といったタウPETプローブが開発され、実用化に向け臨床研究が進んでいる。これが神経内科診療に活用できれば、病理確定診断に近い臨床診断が可能となる。当センターにおいては、使用プローブとして[18F]THK-5351を選定、開発元である東北大学から技術移転と前駆体THK-5352の提供を受け、当センター内でのTHK-5351の合成を開始した。
2020年1月末までに、11名の患者様に対し延べ14回のTHK-5351によるタウPET検査を実施した。臨床診断の内訳はパーキンソン病2例、前頭側頭葉変性症3例、進行性核上性麻痺2例、大脳皮質基底核症候群1例、アルツハイマー病1例、未分類認知症1例、慢性外傷性脳症1例で、全例がPiB PET(1例のみ予定中で未実施)によるアミロイド沈着の評価、およびFDG PETによる大脳糖代謝の評価も併用している。また11名中3名の患者様については、MAO-B阻害剤服用開始前後の計2回施行した。これは、THK-5351がタウとともに、MAO-Bに対する交差活性を示すとの報告に対応したものである。ただし、MAO-B阻害剤は、抗パーキンソン病薬として保険承認されている薬剤であり、服用後の撮像を試みる対象も、パーキンソン病の可能性も疑われるパーキンソニズムを有する患者様に限定される。
今後は臨床診断別症例数の増加を意図して研究を継続、臨床像や諸検査との比較により、各疾患の病態把握を研究成果として、対外的に報告できることを目指したい。