視覚障害とは

ページ番号1001155  更新日 令和3年2月17日 印刷 

視覚障害についての様々な情報をご案内します。初めて視覚障害のことを知る方向けの「視覚障害とは」、視覚支援機器や用具、視覚障害者との接し方、視覚障害をお持ちのご家族の方向けの情報が掲載されています。

視覚支援課の概要については下記リンクもご参照ください。

1.視覚障害とは

1.1 見えにくさとは?

 人の目には、細かなものを見る視力、一度に多くの情報を得るための視野、ピントを合わせる屈折調整、動いているものを検知する動体視力、明るさへの変化に対応する順応、色を識別する色覚、距離感や立体感をつかむための両眼視など様々な機能があり、それらを駆使して日常生活を送っています。人はおよそ8割から9割を目からの情報に頼って生活していると言われており、目のいずれかの機能が低下することによって、情報が得にくい状態となり、そこで様々な生活のしづらさが発生します。

 ここでは、視機能低下による見えづらさの一例を以下に示します。

(1)視力障害

 視力は細かいものを見分ける力です。視力が下がると一般的にメガネやコンタクトによって矯正しますが、一定の視力まで回復が期待できないと、細かなものを見分ける力が落ちてしまいます。この状態を視力障害といいます。
  視力障害があっても、大きさやコントラストを上げることによって見やすくなることがあります。

(2)視野障害

 視野は目が見える範囲のことで、上下・左右に広い範囲のものが見えています。この見える範囲が、狭くなったり一部が欠けたりする状態を視野障害といいます。
 真ん中の一部だけ視野が残る求心性視野狭窄、逆に中心部のみ見えなくなる中心暗点、視界に霧がかったように見える白濁などがあります。

(3)光覚異常

 夜や暗いところに入ると見えなくなる夜盲、痛みを伴うようなまぶしさを感じる羞明、明るいところから暗いところに入った時、あるいはその逆の時に見えづらくなる順応異常などがあります。

(4)色覚異常

 主には先天的な要因で、特定の色の区別ができない、あるいは他の人と色の見え方が異なる方がいます。

(5)両眼視の異常

 左右の見え方が極端に異なってしまったり、それぞれの目で見た情報を統合する力が落ちると、ものが二重に見えたり、立体感がとらえづらくなったり、遠近感がつかめなくなります。

(6)眼球運動の異常

 眼球が不随意に動いてしまい注視が難しくなる眼球振とうという症状があります。

(7)瞼(まぶた)の異常

 瞼が不随意に下がってしまい、目を開けていられない眼瞼下垂という症状があります。

 

 これらのなかで、特に生活上の支障が出ると考えられている「視力」と「視野」に一定以上の機能低下がある方を身体障害者福祉法の中では「視覚障害」と規定しています。

1.2 身体障害者手帳における視覚障害

 視覚障害では、視力や視野の程度により、下の表のように1級から6級までの等級があります(視野障害は2~5級まで)。視力障害と視野障害はそれぞれの基準があり、視力障害の等級と視野障害の等級を合算して視覚障害の障害等級は決まってきます。

表1 身体障害者障害程度等級表(平成30年7月改正)

 

視力障害

視野障害

1級

視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの

 

2級

1.視力の良い方の眼の視力が0.02以上0.03以下のもの

2.視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの

 

1.周辺視野角度(I /4 視標による)の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度(I /2 視標による)が28度以下のもの
2.両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの

3級

1.視力の良い方の眼の視力が0.04以上0.07以下のもの(2級の2に該当するものを除く。)
2.視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
1.周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が56度以下のもの
2. 両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

4級

1.視力の良い方の眼の視力が0.08以上0.1以下のもの(3級の2に該当するものを除く。) 1.周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下のもの
2.両眼開放視認点数が70点以下のもの もの

5級

1.視力の良い方の眼の視力が0.2かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの

1.両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
2・両眼中心視野角度が56度以下のもの

3.両眼開放視認点数が70点を超えかつ100点以下のもの
4.両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

6級

視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの

 

 等級とは別に1種と2種という基準があり、これは交通機関の利用時に助成を受けることのできる区分です。

ランドルト環の画像
図1 ランドルト環

(1)視力の測定法

 視力は裸眼ではなく、矯正をした状態、つまり最も見やすくした状態で測定されます。

 視力はランドルト環(図1)の切れ目が5mの距離から判別できるかによって測定しています。1番大きな指標(高さ7.5mm、太さ・切れ目1.5mm)が5mの距離からでは見えない時には50cmずつ近づいて測定します。50cm近づくたびに視力は0.01ずつ下がり、50cmまで近づいて最も大きな指標が見えた時に視力0.01となります。

 視力は0.01までしか測定しませんが、0.01の指標が見えていない人が全く何も見えていないわけではありません。数字で表現されない視力もあり、目の前で指の本数が答えられる指数弁、目の前で手が動いているのがわかる手動弁、光を当てられた時にわかる光覚弁があります。

 

(2)視野の測定法

 視野計を用いて1点を注視した状態で見える範囲を測定します。現在はゴールドマン型視野計と自動視野計の2種類の視野計が使われています。

 中心視野を測定した後、必要に応じて周辺視野がどれくらい残っているかを測定します。

2.視覚障害支援機器

(1)白杖

 視覚障害者が使う白杖は、法律上は盲人安全つえと呼ばれており、道路交通法上では視覚障害者が白杖を携えて歩いている時には「一時停止、徐行、通行を又は歩行を妨げないよう」にすることが決められています。
 白杖には、大きく分けると身体を支える杖、シンボルの杖、歩く用の杖と3種類あります。よく使われている歩く用の杖は、折りたたみできるものと棒状(直状)の2種類があります。
 歩く用の杖は(1)路面からの情報を受け取る、(2)安全を確保する、(3)視覚障害者のシンボル、という3つの機能があります。これらの機能を満たすため、使う人によってそれぞれ長さや杖先などが少し違ってきます。どの杖を使えば情報をしっかりと収集でき安全に歩けるのか、その人にあう杖を持つことが大切です。

 

(2)拡大読書機

 カメラが移したものを画面に大きく表示させる機械です。画面の大きさは機種によって異なり、一番小さいものでは5インチくらいから、大きいものでは20数インチまであります。画面サイズの小さいものは持ち運びに適した携帯用で、画面サイズの大きいものは据え置き用となっています。大きく拡大するほか、白黒反転で表示したり、読んでいる部分のみを写したり、カメラに写したものを写真のように残して手元で画面を見て確認したりする機能があります。
 文字を読む・書く用途のほか、手元を拡大して爪切りをしやすくしたり、スマートフォンの画面を拡大して操作しやすくするなど、使い勝手は様々です。
 視覚障害の身体障害者手帳のお持ちの方は、自治体の日常生活用具の制度で購入でき、等級は特に問わない自治体が多いです。耐用年数が長いため自分に合ったものを実際に体験し、使っていけることを確認した上で購入する事をおすすめします。

 

(3)デイジー再生機

 デイジー再生機とはデイジー図書(録音図書)を再生し読書を楽しむことができる機器です。デイジー図書とは耳で聴いて読書をできるように本を朗読し、音声データとして収録したものです。この機器は大きく分けて、携帯型のものと据え置き型のものがあります。また、その中にも図書館からデイジー図書のCDを借りて図書を再生するものや、インターネットにつないで図書を機器にダウンロードし読書を楽しむものなどがあります。

 

ほかにもまだまだあります。随時追加していきます。

3.視覚障害者との接し方

 一口に視覚障害者といっても、その程度は様々です。ロービジョン(弱視)の方が割合としては多いですが、その中でも様々な見え方があり、困りごとも人それぞれです。声をかけたときに目と目を合わせて話せるが、いざ歩き出すと障害物にぶつかってしまう方もいれば、白杖を持たずに移動はしていても書類を読み書きするのに困っている方もいます。視覚障害は、そうした多様性がある点が特徴といえるのではないでしょうか。実際は、残存視力や視野を使いながら、見えない部分を道具や人的サポートを受けて生活をしています。そうした姿を見て、「見えているのに白杖を持っている」といった誤解を生じることもしばしばあり、こうした点から、見えづらさの理解の難しさがあるのが現状です。まずは、見え方は様々であり、その見え方により日常生活での困りごとも変わってくる点を知っていただきたいと思います。

 また、多様性という観点では、障害の程度の他、情報を得る手段や移動手段、生活スタイルも様々です。これはいつ視覚障害となったか、また個々の生活環境や考え方で大きく変化します。移動面では全く外出を控えている方、同行援護等の福祉サービスを利用して介助歩行をして外出される方、行先をインターネットや電話などで調べて一人で出歩く方、全く調べずに現地で人に尋ねながら歩いている方など様々です。情報を得る手段も、ホームページ、電話、点字、ラジオのような音声媒体などがあります。多くの手段を持ち、状況に合わせて使い分けている方から、自分では手段を持たずに人から聞いて情報を得る方まで様々です。

 そうしたことから、視覚障害の方に何らかの支援を行う場合、ちょっとした説明だけで解決するのに必要以上に手厚いサポートをしてしまったり、逆に支援が足りなかったり手段が適切でなかったりすることもあります。どんなサポートが必要か、判断に迷う場合は気軽に聞いていただけると適切な支援につながります。ここで紹介する対応の仕方についても、一般にいわれていることを紹介しています。実際は当事者と適切なコミュニケーションを行った上でなされていくことが望ましいと考えています。

コミュニケーションをとるときのポイント

 話をしているときは、主に相手の声音から様子を判断しています。なので、例えば視線を投げかけられても気づけなかったり、ジェスチャを交えて会話をしても、身ぶりの部分からはその内容を汲み取ることができないことがあります。話しかけられていても、自分に話しかけられているとは気づかなかったり、逆に他の人に話しかけているのを自分に話しかけられていると勘違いすることも多々あります。健常者同士で行うコミュニケーションに、声に出して表現したりちょっとした説明を加えるなどご配慮をいただけると円滑な会話につながります。また、すれ違うとき、「こんにちは」などと一声かけていただくと、挨拶と同時に道のどちら側から歩いてきているかが分かります。一緒に名乗ることを加えていただくと、声と名前を一致して覚えることもできます。急いでいるときなど追い越したいときに、「右側から通ります」などとさりげない一言があると、慌てることなく状況が把握できます。その他、以下にポイントとしてまとめてみました。

 

(1) まずは声がけからお願いします

 まず、声がけのタイミングですが、基本的には移動中は歩くことに集中しているので、声がけに気づけなかったり、すぐに反応ができないことがあります。立ち止まっているときが良いタイミングです。ただし、車道やホームに向かって歩いているときや人と衝突しそうな緊急のときは躊躇なく注意を促してください。

 そして声のかけ方については、いきなり腕を引っ張ったり押したりすると驚いてしまいます。いきなり白杖をつかんだり肩を抑えるなど自由を奪う行為も強い不安感を感じます。緊急の時でなければ、できれば正面からソフトに声で話かけると良いでしょう。自分に話しかけられていることに気づかない場合があるので、名前が分かれば名前を呼んで話かけ、そうでない場合、気づいていない様子の際は話かけながら肩を軽く叩いて知らせても良いと思います。

 具体的には、緊急でない場合は、立ち止まっているときなどに、正面から「お困りですか?」、「どちらまで行きますか?」などと話しかけると良いと思います。

 緊急時は「そこの白杖の方、危険なので止まってください」などと具体的な指示とともに伝えてください。

 

(2) 相づちなどは声に出していただくと会話がスムーズになります。

 会話中に相づちをうつ場合など、首を振ったりするだけでは伝わらず、話が通じているのか分からないので、声に出していただけると助かります。

 

(3) ちょっとした状況を気軽に伝えていただけると助かります。

 相手を待たせるときに「今○○をしているので少しお待ちください」といった状況の説明はとても大切です。そうした声がけがないと、その「間」に意味があるのか、それとも相手が自分のリアクションを待っているのか、不安に感じてしまうものです。「今準備しているので少しお待ちください」などと説明があることで、安心して待っていられることができます。

 また、一緒にエレベータに入るときなど「中は混雑しているようです」、外を歩いているときに「雨雲が出てきました」「前から人が歩いてきているので少し左によけます」など、また街で信号待ちをしている当事者の方に、「信号が青に変わりましたよ」など、ちょっとした情報をさりげなく伝えていただけると大変助かります。

 

(4) 立ち去るときは一声かけてください。

 今まで話していた人が何も言わずに立ち去ると、そのことに気づかず、まだいると思って話してしまうこともあります。「それでは失礼します」、「少し席を外します」など一声いただけると有難いです。「時間になったら呼びに来ます」など、また戻る場合はその旨お伝えください。

説明をするときのポイント

 視覚障害者と接しているとき、見えている「もの」や「こと」を言葉で説明する場面はどうしても多くなります。しかし、とっさに伝わりやすい説明ができなかったり、慣れが必要なこともあります。例えば書類を代読するときには、読む側の解釈を交えずにそのまま読むことが望ましいのですが、書類の性質や分量によっては大まかな概要から話して細かい内容に移るなど効率的に進めても良いと思います。どのように説明をするか相手に聞いて進めたり、相手が理解しているか、有効な説明か様子を見ながら進めていくことが大切だと思います。

 

(1) 「あちら」、「そこの」などの指示語では内容が伝わらないので、具体的な表現で説明してください。

・「あそこに椅子があります」→「そのまま真っすぐ歩くと20m程度先の左手に椅子があります」

・「そこのレバーをひくとおつりが出ます」→ 「コインを投入したところの左にあるレバーを引くとおつりが出てきます」

 

(2) 対面での会話時は左右の方向の指示にご配慮ください。

 方向を指示するときは相手からみた方向で説明をしていただけると伝わりやすいです。

 

(3) 言葉のみでなくても触れられるものがあれば触れながらの説明も有効です。

 実際に手をとって「このレバーが水を流すときのレバーです」など、言葉では説明しづらく、実際に手で触った方が理解しやすいものについては触らせて確認しながら説明を行うと効率的です。

 

(4) 分量の多い書類の代読は効率的に。

 書類を代読する際は、その分量や性質により、そのまま全部読む必要がなかったり、その時間がないことがあります。そうした際は、当事者に確認をした上で、大まかな概要(文書のタイトル)を伝え、まず項目を読み上げて、そこから必要な部分を当事者に尋ねて部分的に読むなど工夫をして効率的に進めても良いと思います。

 

(5) 時計の文字盤に見立てたクロックサインも有効です。

 「(お盆を時計の文字盤に見立てて)5時の方向に味噌汁があります」などといった説明です。人によって、また場面によっては伝わりにくいこともあります。理解している様子などを見て、伝わっていないようなら直接触らせて確認する方式に変更するなど、その人に合った説明を心がけるのが望ましいでしょう。

介助歩行・誘導の方法

 方向を見失ったり、今いる場所が分からなくて立ち往生し、誰かの助けを必要としている場面でも、周囲に人がいるか、また声をかけて良い状況かなど判断がつかず、自分から声をかけることが難しいことがあります。そうしたとき、援助できる場合は声をかけていただけると大変助かります。以下に誘導の方法をまとめます。

 

(1) 声がけ:迷わずに順調に安全な場所を歩いているときは声がけの必要はありませんが、立ち往生して考え込んでいたり、行ったり来たりしているときなどは、「どうかしましたか?」「お手伝いしましょうか?」など、話しかけていただけると助かります。自分が話しかけられていることに気づかない場合は、話しかけながら肩をトントンと叩いても良いと思います。ただし、いきなり腕をつかんだり体を押したりすると驚いてしまいます。

(2) 困っている状況の確認:どのようなことで困っているのか、どこに行きたいかなど確認し、言葉による説明で済む場合は口頭で教える。

(3) 誘導が必要な場合は相手の半歩前に立ち、肘か肩をつかんでもらうようにする。

(4) 誘導者の腕は自然に下におろした状態で歩き出します。相手は自然に後ろからついて歩き出します。2人分の幅を確保しながら歩くようにします。

(5) 目的地に到着したら、場所や方向の説明をしていただき、相手が理解できているかを確認して誘導を終えてください。何もない空間では不安を感じさせることもありますので、壁などを触れさせると現在地や方向が理解しやすくなります。

 

≪階段の昇降≫

 階段昇降時は、環境によってはエレベーターかエスカレーターか階段か選択できる場合があります。相手にどちらが良いか確認していただくと良いと思います。また、階段を選んだ場合も、手すりをつかみながら自分で歩いた方が安全に歩ける場合もあります。手すりがあることを伝え、どういうサポートが必要か尋ねていただければと思います。以下、階段の介助歩行の例を示します。

(1) 階段に近づくときに「もう少しで昇り(下り)階段があります」と声をかける。

(2) できるだけ階段に真っすぐになるように近づき、階段の直前で立ち止まる。

(3) 「ここから上り(下り)階段です。」と一声かけ、相手が白杖で段差を確認するのを待つ。手すりの有無を伝え、手すりを利用した方が良いか確認をとる。

(4) 相手が合図をしたら階段を進み始める。一定のリズムで進むと良い。

(5) 最後の段に立ったら立ち止まり、相手が最後の段を踏んだところで「そこまでです」と声をかけ、再び歩き始める。

4.視覚障害のご家族の方へ

 これまで一緒に暮らしていた家族の誰かが、突然見えなくなってしまったり、少しずつ見えなくなっていったとき、どのように接すればよいか、戸惑う場面も多いと思います。ここでは、視覚に障害のある方と一緒に暮らしていく上で、またサポートを行う上で知っておいていただきたい点やご配慮について説明しています。

生活全般にわたっての配慮

(1) 状況の伝え方、説明の仕方

 「そこに置いてある…」といった指示語は使わない、説明は具体的にするなど、基本的な接し方は前述の通りです。一緒に生活をしているご家族の方には、状況を伝えたり、何かを説明する機会は大変多くなると思います。一緒にテレビを見ているとき、映像でしか伝わらない場面でちょっとした説明をしたり、一緒に外を歩いていて、「30m先にお隣の○○さんが歩いてきている」など、ちょっとした状況をさりげなく伝えることで同じ情報を共有することができます。

 

(2) 本人の意向を確認し尊重する

 せっかく説明をしても、不必要な情報であったり、逆に細かすぎて何が大切なことか分からなくなることがあります。また、良かれと思ってした行動が裏目になってしまうこともあります。そして、その積み重ねは気持ちがすれ違う原因となってしまうかもしれません。そうしたことを避けるため、どんな情報が必要か、サポートやその手段について、お互いが普段から話したり、確認し合うことが大切だと思います。

 

(3) 見守ることも大切

 当事者の方が何かしようと行動している際、いつもと違う方へ歩いていったり、何かを確認しようとしていることがあります。それは一見、迷っていたり困っているように見えても、自分でできることを増やそうとしたり、何か工夫できることを考えている場面かもしれません。そうしたときは、特に危険な要素がない限り見守ることも大切です。

自宅での配慮

(1) 危険な場所への対応や配慮

 自宅内で危険な個所はありませんか?特に通路上付近に角ばったものがあったり、不安定に積み重なったものがあるなどです。移動時にぶつかりやすい物や柱などには、緩衝性のものを当てたり、注意を促す印をするなどの工夫が必要な場合もあります。

 また、扉が半開きになっている場合も気づきにくく衝突の原因となり非常に危険ですので、扉はきちんと閉めるか、開ける場合は最後まで開けて固定することが望ましいでしょう。その他、部屋の通り道に配線コードや滑りやすい物を置かないなど安全な環境づくりにご配慮ください。

 

 (2) 触って分かる目印をつける

 自宅内での移動では、慣れた環境で位置関係などは把握できていても、自分の立っている場所や方向を見失ってしまったり、目的のものが見つけられないこともあります。そうした時は周囲の壁や置いてある物を触って自分の位置を確認しています。例えばドアが並んでいるときに、使用頻度の高いドアのドアノブにカバーをつけると分かりやすくなります。迷いやすい場所では、触って分かる目印をつけると、早く目的の場所へ辿り着けるようになります。

 また、電気製品のボタンも、近年では初めから触って分かるように設計されているものもありますが、そうでない電気製品でも、必要なボタンに盛り上がりのあるシールを貼ることで操作しやすくなります。

 

(3) 物の置く位置にご配慮を

 見えない状態や、見えていても視野が狭い状態では、物を探すのが難しくなります。目で確認しようとするとかなり時間がかかってしまったり、手探りでなかなか見つからないなど、日常生活の中で頻繁に起こりえます。家庭の中で使用頻度の高い物については、置く位置を決めておくと、かなり生活が楽になります。代表的な例では、ティッシュペーパー・リモコン・ゴミ箱の位置、浴室の石鹸やボトルの位置・順番、冷蔵庫の飲み物やバターの位置、タンスの中の無地のものと柄物との区別などです。

 また、普段何も置いていないところに物が置かれていると、それに気づくことができず躓いてしまうこともよくあります。特に廊下や部屋の中の通り道になる場所へ物を置くことは避け、一時的に置く場合は、一声かけて注意を促しておくと良いでしょう。

 

(4) 食事の際の配慮

 まず、食卓に並んでいるお皿やその中身を説明します。説明は手をとっても、前述のクロックポジションで説明しても良く、伝わりやすい方法で行ってください。このとき、お皿の中に飾りなど食べられないものや、レモン・わさびがのっているなどの場合に、注意を促すことが大切です。

 次にお皿の配置ですが、特に決まった配置はありませんが、ご飯やお味噌汁、湯飲みなど、よく食卓に並ぶものは、ある程度配置を決めておくと食べやすくなります。

 一度食卓の配置を伝えることで、食卓のどこにどんなお皿が並んでいるか、ある程度イメージすることができます。なので、黙ってその配置を変えてしまうと、その変化に気づけず戸惑ったり湯飲みを倒してしまう事故につながります。「○○のお皿さげるね」「○○のお皿を前に置くから湯飲みを右にずらしたよ」などと、状況が変わった場合、言葉で具体的に伝えることが大切です。

 小皿に取り分けた場合も、何をお皿に置いたかを説明し、何か残っている場合は、気づいていないかもしれないので、「まだ○○が残っているよ」と教えると気づけます。

 その他、視力が活用できる場合は、黒っぽいお茶碗にご飯を入れたり、白っぽい器に味噌汁を入れるなど、色のコントラストに配慮した食器を使うことで視認性が上がり、食べやすくなることもあります。

外出時など一緒に行動するときの配慮

(1) 介助歩行

 一緒に歩くときや階段の昇り降りについては前項の「視覚障害者への誘導の仕方」を参考にしてください。基本的には相手の半歩前に立ち、肘か肩をつかんでもらい、そのまま歩いて相手が後ろからついて歩くようにします。障害物にぶつからないよう2人分の幅を確保しながら歩くよう注意してください。

 

(2) 狭い場所を通るときは…

 混雑している場合や、十分に2人分の幅が確保できない場合は、相手にそのことを伝えます。その上で、相手がつかんでいる腕を背中に回して歩きます。

 

(3) 椅子に座らせるときは…

 まず、背もたれの有無、テーブルの有無、左右に誰かが座っているかなどの状況を伝えます。そして、座面と背もたれがある場合は背もたれを触らせます。手で確認することで方向を確認して座らせてください。テーブルがある場合は位置関係も伝えてください。

 

(4) 情報の伝え方

 一緒に行動をしている際には、周囲の状況や路面の状況を伝えることが多くなります。景色やお店の情報など気軽に伝えることも大切です。また、階段や改札など、相手に準備が必要な場面では、直前に言われると咄嗟に反応できないことがありますので、「もうすぐ改札です」、「50m先に○○さんが歩いてきています」などと、ある程度準備ができる間をとって伝えると良いでしょう。