高次脳機能障害のリハビリテーション

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在宅ケア(日本損害保険協会自賠責運用益拠出事業)

『在宅生活を支援する生活適応援助者(生活版ジョブコーチ)養成研修を紹介』

 在宅ケア試行事業の結果、生活行動を自立的に行えるようにするために、生活場面に介入し、専門的な知識・技術を活用して、計画的に援助する方法が有効であることが分かりました。支援計画を立て、ヘルパーや家族などにコーチする人を「生活適応援助者(生活版ジョブコーチ)」と名づけています。
アセスメントからプランニング、ヒントツールや支援の手順書の作成など、生活版ジョブコーチに必要な知識・技能に関する研修の実際です。
1.研修プログラム(PDFファイル・74.1KB)
2.研修内容-知識編-(PDFファイル・5.36MB)
3.リンクページ研修内容-技術編-(PDFファイル・2.6MB)
4.資料編(研究協力団体名簿)(PDFファイル・137KB)

『交通事故等による高次脳機能障害者の在宅ケアのあり方に関する調査研究』 (日本損害保険協会自賠責運用益拠出事業)

 脳外傷者の在宅ケアに関して、調査編では在宅生活における家族の支援状況の調査結果を、試行編では在宅サービスを活用して支援した実際を紹介しています。試行編にはガイドヘルパー、ホームヘルパー、グループホーム、社会参加促進(デイサービス、ITサポート)の4種類があります。

調査編

  1. 目的

     脳外傷者が在宅生活を送るうえで、家族がどのような支援を行なっているのかを明らかにし、その結果、どのような支援が必要かを検討するために、社団法人日本損害保険協会の助成を受けて実施した。

  2. 調査の方法と内容
    • 調査対象:調査期間内に名古屋市総合リハビリテーションセンターを利用するか、当事者の活動の場に参加した脳外傷者の家族。身体障害が重いケースは除外した。
    • 調査期間:平成17年7~8月の2ヶ月間。
    • 調査内容:表1に示した『調査項目』の48項目について『支援の基準(支援度)』に基づき、面接によって聞き取った。
    • 調査票マニュアルはこちら(PDFファイル・350KB)
  3. 調査結果と考察
    1. 回答数と分析
      • 有効回答=104名(男女構成:男性82名、女性22名,年齢構成:10歳台5名、20台32名、30台33名、40台12名、50台9名、60台13名)。
      • 分析方法=クラスター分析をもとに、支援の基準に応じて支援度が最も低い群をI群とし、最も重いV群までの5つの群に分類した。

      表1.調査項目と支援の程度

      【調査項目】5領域、全48項目
      (1)生活行動(10項目)=生活リズム、ADL関係、意思疎通関係
      (2)生活技術(8項目)=IADL関係、交通機関利用
      (3)生活管理(9項目)=金銭関係、医務関係、身嗜み、その他
      (4)社会活動(7項目)=社会性関係、契約・勧誘関係、その他
      (5)問題行動(14項目)=依存性・退行、感情コントロール、欲求コントロール、こだわり、その他
      【支援の基準(支援度)】
      0)自立(支援不要)
      1)準備=家族が本人を混乱させない対処法を習得している等、周囲の"準備"により安定している場合
      2)確認・声かけ=準備だけでは不十分、確認・声かけが必要な場合。数回に1回の確認は準備の範囲
      3)介助=行動を共にする、見本を示す等、直接的な行為が必要で、それを大体受け入れられる場合
      4)後処理=上記の支援を行なっても守れない、想定を超えた言動がある等、後始末が必要となる
      ※「問題行動」は『支援の基準』に頻度を加味
    2. 結果と考察
       群別の人数はI群=11名、II群=14名、III群=34名、IV群=23名、V群=22名であった。群別の支援の程度をグラフ化したのが図1である。
       I群は全体に支援度は低いが、「社会活動」は0)自立が40%にとどまっていた。II群は全体にI群よりやや支援度が高い程度だが、「社会活動」の0)自立の少なさは際立っていた。III群は「生活行動」の0)自立は50%を超えていたが、「生活技術」は1)準備~4)後処理の支援度の者が計73%、「生活管理」は同64%、「社会活動」は同87%を占めていた。IV郡は「問題行動」の支援度が高く、とくに4)後処理の割合が24%と高かった。V群は全てに支援が必要で"重篤"だが、4)後処理はIV群より全ての領域で少なかった。全体を通して「生活行動」より「生活技術」と「生活管理」、さらに「社会活動」で支援度が高い傾向がみられた。
       領域による差が生じた要因としては、次の理由が考えられる。「生活行動」はADL関係の項目が中心のため支援度が低い。「生活技術」は調理、洗濯や公共交通の利用など一連の行為が必要、「生活管理」は確認・判断・実行等の多数の要素が関係する項目のため高くなり、「社会活動」は他者や社会との関わりが求められる項目のためさらに高くなった。「問題行動」については最重度のV群よりIV群の方が様々な"思い"や欲求が生じやすいため、4)後処理が必要な言動も多いと考えられる。
       調査した48項目については、個々の支援度の平均も算出したが、次の項目が高かった。「生活行動」では意思疎通関係(指示の理解、意思の伝達)、「生活技術」では調理、掃除、電話・来客対応、公共交通利用、「生活管理」は金銭管理や大切な物の管理、「社会活動」では契約手続きや診察対応など。いずれも確認・判断(質)や工程数(量)、および脳外傷者が苦手とする能力がより求められる項目であった。また、「問題行動」は項目ごとの差が大きかったが、脳外傷者の特徴として指摘される態度・表情、依存性・退行、思い込みの支援度が高く、IV群で高さが際立っていた。
      図1.群別の支援の割合 図1.群別の支援の割合 図1.群別の支援の割合 図1.群別の支援の割合 図1.群別の支援の割合 図1.群別の支援の割合

      図1.群別の支援の割合
      注:領域ごとに各項目についての人数割合を算出

  4. まとめ

     今回の調査から、家庭において脳外傷者の自立を支援するためには次の点を踏まえ、家族が行なっているケアを"社会化"していくことが可能と考えられる。表2は具体例である。

    • 訓練的在宅サービス=「生活技術」領域の項目は施設の生活訓練で行なわれるものが多いが、繰り返しによる学習効果が期待できるため、在宅でも訓練的要素をもったサービスを投入することで効果が上がると考えられ、既存サービスの活用も可能である。I、II群は比較的自立している者が多いため、III、IV群が中心になると考えられる。訓練は[介助→確認・声かけ→準備→自立]という段階を追って支援量を軽減していくという視点が必要となる。
    • 生活全般=家族の高齢化、親なき後の問題は現実化している。生活をどのように支えるかという点から「生活管理」面を中心としたサービスが必要になるが、支援の形態は高次脳機能障害の重篤さによって一律ではない。I、II群は"随時"相談ができ、適切なアドバイスがあれば生活できる者も多い。III、IV群は"常時"の相談や対応が充実したサービスが必要、V群は常に介助の手が差しのべられる手厚いケアが必要と考えられる。
    • 特化した在宅サービス=調査でも明らかになったことだが、I、II群の者でも休日は充実した過ごし方がなかなかできないため、"活動の場"としての休日のデイサービスのニーズは高い。また、金銭や財産の管理が不十分な脳外傷者も多い。家族がケアしているうちはいいが、将来は地域福祉権利擁護事業や成年後見制度の利用が欠かせない者もおり、すでに利用している者もいる。

     現在、当センターでは既存サービスの活用を中心に、表2で示した在宅サービスの試行を開始しており、さらにその適切性や可能性を検証していく考えである。

    表2.考えられる在宅サービス
      訓練的在宅サービス 生活全般 特化した在宅サービス
    I・II群  
    • 生活支援センター
    • デイサービス(休日)
    III・IV群
    • ホームヘルプ(生活技術関係、外出含む)
    • 生活支援センター+ホームヘルプ
    • グループホーム
    • 地域福祉権利擁護事業(金銭・契約関係等)、成年後見制度(財産関係等)
    • ホームヘルプ、デイサービス(休日)
    V群
    • ホームヘルプ(生活技術関係、外出含む)
    • 手厚いケアの生活施設(自立支援法のケアホーム等)
    • ショートステイ
    • 地域福祉権利擁護事業(金銭・契約関係等)、成年後見制度(財産関係等)
    • ホームヘルプ、デイサービス(休日)
    備考:問題行動の一部は精神科領域の対応が必要

試行編

  1. 目的

     平成17年度実施した財団法人日本損害保険協会助成「交通事故等による高次脳機能障害者の在宅ケアのあり方に関する調査研究」の継続研究として、どのようにしたら脳外傷者に既存の在宅サービスを活用できるのか、また在宅サービスを訓練的に利用することで自立できるようになる行動は何か、試行的に実施しその効果や可能性を検証する。

  2. 方法と内容
    1. 対象者

       在宅もしくは在宅に移行する予定の脳外傷者でサービスの投入により訓練効果が見込まれる者

    2. 試行されたサービス内容

       ホームヘルプ、ガイドヘルプ、グループホーム、社会参加(デイサービス、ITサポート)

    3. 各試行サービスの概要

       試行したサービスのサービス提供機関、目的、事前準備、モニタリング、結果については表1のとおりである。尚、4種のサービス利用の実際をDVDに作成した。

    表1.試行した在宅サービスの概要
      サービス提供機関 利用目的 事前講習 モニタリング 結果
    ホームヘルプ 居宅介護支援事業所(介護保険及び身体障害) 調理を中心に家事動作の自立 講習及び実地研修 アセスメント及び生活の構造化支援。行動の根拠をその場でフィードバックするようアドバイス 調理を始めとする家事動作の自立
    ガイドヘルプ 身体障害者移動支援事業所及び当事者作業所 作業所への通所の自立 講習及び実地研修 電話連絡によるアドバイス及び実地確認 作業所への単独通所の自立
    グループホーム 精神障害者生活支援センター及び当事者作業所 母子分離、行動の定着と生活管理 講習及び利用目的の同意による契約 行動の指示の仕方や定着の方法をホームの世話人にアドバイス 生活行動のパターン化
    デイサービス 当事者作業所2箇所 パソコンを用いた余暇活動 パソコン講師への実地研修 事業内容の提案やアドバイス及び進捗管理 パソコンを利用した趣味の拡大
    ITサポート 当事者作業所2箇所 在宅でパソコンを行うための訪問相談、環境設定 パソコン講師への実地研修 事業内容の提案やアドバイス及び進捗管理 パソコンを利用した趣味の拡大
  3. 結果

     各試行サービスの詳細な結果と、作成したマニュアルはPDFファイルを参照していただきたい。

  4. 考察

     高次脳機能障害に関して知識や経験を持つ当事者作業所とそれ以外の事業所では、ケアコーディネーターの役割が異なった。そこで、高次脳機能障害者へサービス提供の経験を持たない事業所に対して行った取り組みを以下に挙げたい。

    1. 障害の特徴と対応に関する一般的な知識と支援方法のイメージの共有

       高次脳機能障害は認知的な障害であり外見から理解しにくいことから「見えない障害」といえる。サービス提供の経験を持たない事業者に対しては、一般的な知識として障害の特徴を共有する必要があった。また、「訓練的要素」を持つサービス提供であることから、接する際には「見守り」「声かけ」の支援が多いことも特徴として挙げられる。

    2. 具体的なノウハウの伝達

       外出ヒントカードのような代償手段の利用に関して、その作成のための評価視点や作成する際の留意点(紙のサイズや表現方法)、声かけのタイミング等を現場実習やモニタリングを通じて伝達をすることが必要であった。このことにより利用者への関わり方を統一させることができ、より早くて正しい行動の定着をはかることができると考えられる。

    3. ケアコーディネーターの役割

       ケアコーディネーターは全体を統括する役割のみならず、障害の特性を理解したうえで現場に出向いて代償手段の検討及び作成、現場からの報告をもとに改善点や問題点を把握しながら支援方法を適宜検討、修正していくことやサービス提供責任者にアドバイスしていくことが必要であった。後者の役割は就業場面においてジョブコーチが担っている役割と同様であると考えられる。

  5. まとめと課題

     高次脳機能障害者が在宅サービスを活用するための方法は既に考察で述べた。また訓練的に利用することで自立できる生活行動があることも実証できた。しかし普及にあたっては2つの課題がある。一つは普及の方法である。講習会やDVD、マニュアルのような視聴覚的教材により普及が可能であるか検証しなければならない。併せて生活版ジョブコーチの役割を担う人材が必要になると考えている。二つ目は経済的な問題である。記憶障害のある高次脳機能障害者が行動を定着し自立に至るためには集中的なサービス投入が必要である。金銭的な負担を軽減する点から、行動の定着を図る適切なサービス量はどの程度なのか明らかにしていきたい。

    在宅ケアに関するビデオの貸し出しについて
    • 高次脳機能障害者の支援に関わる関係者の研修に資することを目的とし、目的外の使用および複製を禁止します。
    • 貸し出し先は高次脳機能障害の支援に関わる機関および団体とし、個人への貸し出しはいたしておりません。
    • 貸し出し方法は以下のとおりです。
      1. 下記のリンクからビデオ使用申込書兼誓約書をダウンロードし、印刷して必要事項を記載の上、FAXもしくは郵送で名古屋市総合リハビリテーションセンター高次脳機能障害支援課に申し込んでください。
      2. 高次脳機能障害支援課において、使用目的が適正であると判断した場合、送料着払いで郵送いたします。使用目的に疑義がある場合は、申請機関・団体にお問い合わせさせていただくか、貸し出しをお断りすることがあります。
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      名古屋市総合リハビリテーションセンター 高次脳機能障害支援課
      FAX番号:052-835-3745
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