名古屋市総合リハビリテーションセンター第二神経内科部長
田島稔久
正常ボランティア9名、MCI 1名、アルツハイマー型認知症4名にてPittsburgh Compound-B(PIB)をリガンドとしたPET検査により脳内に蓄積したベータアミロイドの検出を行った。
正常例では大脳皮質および小脳皮質への結合は低く、大脳および小脳白質、脳幹に中等度の結合がみられた。
これに対しアルツハイマー型認知症では大脳皮質に高い結合がみられ、白質より結合が高かった。
大脳皮質の中では、特に前頭葉皮質、頭頂葉、後部帯状回から楔前部における結合が高く、小脳皮質では正常例と同様結合が低かった。
MCIでは正常例と同様大脳皮質の結合は低いところが多かったが前頭葉頭頂部から頭頂葉に一部高い結合を認めた。
また正常例の中にも後部帯状回から楔前部、頭頂葉で高い結合を認めるもの、アルツハイマー型認知症の中にも正常例と同様大脳皮質への結合が低いものも認められた。
アルツハイマー型認知症におけるアミロイドβ蛋白の脳への蓄積はアルツハイマー型認知症発症の10年以上前から始まると考えられており、PIB―PETはアルツハイマー型認知症の超早期診断、抗アミロイド療法の治療効果判定への有効性が期待されている。
PIBは老人斑のアミロイドβ蛋白に特異的に結合するわけではなく、脳血管のアミロイドβ蛋白にも結合する。
またレビー小体型認知症の80%においてPIBの高い結合がみられるとも報告されており、アルツハイマー型認知症の特異的診断ツールになるわけではない。
しかし、従来の諸検査にて全く異常を指摘できない段階からアルツハイマー型認知症をとらえうる可能性もある。
今回正常ボランティアでの高結合例がこれに相当するかどうかは、現段階では明らかではないが、今後のデータ蓄積と長期的な経過観察が必要である。




名古屋市総合リハビリテーションセンター企画研究室
林 絵美
Positron Emission Tomographyは日本語で陽電子放出断層撮影法と訳され、一般にはポジトロンCTまたはPETと呼ばれる。
この検査の特徴は人間の体の形態をみるX線CTやMRIとは異なり、脳血流、糖代謝、神経情報伝達などの機能をみることができ、正しい測定法をとれば定量性が保障されていることである。
PET-3D収集は2D収集に比べ約8倍の信号を得ることのできる高感度な収集法といわれ、検査時間を短縮しても同等の画像を得ることが可能であり、患者への負担軽減と検査スループットの向上が期待できる。
また、薬剤投与量を低下させることができ、被ばくを低減することも期待できる。
その一方で散乱線などが増加し、最高計数率は比較的低い放射能濃度でピークとなることから、3D収集では低濃度放射能の被写体には有利であるが、高濃度の測定は困難であり、また散乱線などのノイズにより2D収集でのPET画像とは描出能が変化する可能性がある。
本研究では、当センターのPET装置(HEADTOME-SET2400W、島津製作所)における、3D収集画像の特徴を把握し、3D収集が臨床的に利用可能か検討した。
本研究で用いた線条体ファントム(fluke Biomedical社製)は組織等価の頭蓋骨、脳実質部分、線条体部分を含む形状をしており、解剖学的に正確な位置に設計している。
このファントムを用いて収集法の違いによる画質の検討を行った結果、信号量の少ない領域での2D収集ではノイズが多く定量性が保てないのに対し、3D収集ではノイズの少ない安定した画像を得ることができた。
3D収集ではカメラの外に存在する薬剤からの放射線の影響を受けて画像が乱れるデメリットがあるが、この外乱の影響は外からの放射線によって、脳の上部に向けてPET値が高くなる現象を明らかにできた。
また、外部からの放射線量減衰に伴って、この影響が指数的に小さくなり、投与数分後より影響が無視できるレベルになることが確認できた。
本研究によって、2D収集は値の変動が大きく定量値が不安定であるのに対し、3D収集は定量値に信頼性が高いこと、3D収集が2D収集より画像の描出能が高いことが明かとなり、3D収集が臨床利用可能であることを示した。
また外乱の影響を考慮し薬剤投与直後の3D収集については外乱除去対策が必要であることが明らかとなった。


