企画・研究

ページ番号1000592  更新日 令和3年9月30日 印刷 

企画研究局を含めた、事業団における研究の一部を紹介します。

現在行われている研究

PET、MRI等を用いたアルツハイマー病早期診断のための研究

写真1
アルツハイマー病で
脳機能の低下している部位

アルツハイマー病の進行をできるだけ遅らせるためには、早期での診断と治療が有効です。
そこで、脳の検査として従来より用いられている脳波やMRI、[18F]FDGを用いたPET検査に加えて、アルツハイマー病で早期から脳に蓄積するといわれるアミロイドβ蛋白に結合する[11C]PiBを用いたPET検査の検査結果などを、アルツハイマー病患者と健常者、軽度認知障害患者で比較することで、アルツハイマー病の病態解明や早期診断を目指しています。

PETを用いた神経変性疾患の研究

タウ蛋白はアルツハイマー病やピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症などの神経変性疾患で脳に蓄積しており、診断に重要な役割を果たしますが、通常は死後の病理解剖でようやく診断が確定します。タウ蛋白などを可視化する[18F]THK-5351と、従来より用いている[18F]FDG、[11C]PiBなどのPET検査により、これらの疾患の病態解明を目指しています。

研究成果

心筋梗塞メカニズムの解析(対象:心筋梗塞後リモデリング心

PET心筋血流画像の例
健常者のNH3心筋血流画像の例

急性心筋梗塞において、発生後急性期から慢性期にかけて左室健常(非梗塞)部心筋にリモデリング(遠心性拡大と壁肥厚)が生じ、患者生命予後の悪化に関与することが知られています。
そこで左室リモデリング心がどのようなメカニズムで梗塞心の予後を悪化させるのか、その病態をポジトロントレーサーである[11C]Acetate、[11C]CGP12177を用いて解析を行いました。

[11C]Acetateを用いた心筋酸素代謝イメージング

[11C]Acetate静注3分から5分後の早期像は心筋血流を表し、その後心筋内から酸素代謝に応じて洗い出しが起こります。[11C]Acetateは心筋代謝基質の血中濃度、ホルモンレベルにほとんど依存しないため、FDGと異なり安定した画像を得ることができます。

[11C]CGP12177を用いたβアドレナリン受容体結合能の測定およびイメージング

CGP12177はβ1、β2非選択的βアドレナリン受容体拮抗作用を有する化合物です。血中に投与された[11C]CGP12177およびCGP12177は組織に移行し、βアドレナリン受容体に選択的に結合します。したがって、投与後の放射能分布をPETで測定することにより、βアドレナリン受容体の結合能を評価することができます。

さらに、現在心筋血流を測定できる[13N]NH3や、心筋交感神経機能を測定できる[11C]HEDを用いたPET検査により、多角的な心不全の病態解析を行っています。

近赤外分光法(光トポグラフィー検査)を用いた高次脳機能障害のリハビリテーションに関する検討

写真3
課題遂行中の脳血流変化の例

頭部外傷後遺症による高次脳機能障害に対するリハビリテーションの訓練効果を検証するため、近赤外分光法(NIRS、光トポグラフィーとも呼ばれます)を用いて、当センターで使用している認知訓練課題を行っている最中の脳血流(ヘモグロビン変化量)を健常ボランティアと高次脳機能障害患者で比較しました。
健常ボランティアと比較して、高次脳機能障害患者では前頭部を含む脳全体において、多くの課題でヘモグロビン変化量が増加しており、高次脳機能障害患者では脳により多くの負荷がかかると考えられます。
この研究の結果は認知機能回復のための訓練指導マニュアル(メディカ出版)に掲載されています。
※ご注意:現在当センターには近赤外分光法の検査装置がなく、近赤外分光法の検査を受けることはできませんので、ご了承ください。

混合正規分布を用いた心電図の近似とQT間隔の自動計測に関する検討

一部の抗不整脈薬、向精神薬、抗生物質などの中には、服用すると不整脈を引き起こし、場合によっては突然死に至る可能性のあるものがあることから、問題となっています。この現象は心電図のQT間隔を計測することで予測することが可能ですが、従来は手動で計測していたため負担となっていました。この研究では、心電図の一部を混合正規分布と呼ばれる曲線で近似し、その傾きを計測することで、QT間隔を精度よく自動的に計測することが可能となりました。

コンピューターを用いたアルツハイマー病の診断支援と予後予測に関する検討

図1
アルツハイマー病患者の脳波変化

コンピューターと人工知能プログラム(ファジィニューラルネットワーク)を用いることで、アルツハイマー病の患者に特有の脳波変化を学習させ、現在のアルツハイマー病の重症度と数年後の重症度の変化を予測することが可能になりました。