Pittsburgh Compound-B(PIB)を用いたPETによるアルツハイマー型認知症研究

ページ番号1000595  更新日 平成30年3月30日 印刷 

名古屋市総合リハビリテーションセンター第二神経内科部長
田島稔久

正常ボランティア9名、MCI 1名、アルツハイマー型認知症4名にてPittsburgh Compound-B(PIB)をリガンドとしたPET検査により脳内に蓄積したベータアミロイドの検出を行った。
正常例では大脳皮質および小脳皮質への結合は低く、大脳および小脳白質、脳幹に中等度の結合がみられた。これに対しアルツハイマー型認知症では大脳皮質に高い結合がみられ、白質より結合が高かった。大脳皮質の中では、特に前頭葉皮質、頭頂葉、後部帯状回から楔前部における結合が高く、小脳皮質では正常例と同様結合が低かった。MCIでは正常例と同様大脳皮質の結合は低いところが多かったが前頭葉頭頂部から頭頂葉に一部高い結合を認めた。また正常例の中にも後部帯状回から楔前部、頭頂葉で高い結合を認めるもの、アルツハイマー型認知症の中にも正常例と同様大脳皮質への結合が低いものも認められた。
アルツハイマー型認知症におけるアミロイドβ蛋白の脳への蓄積はアルツハイマー型認知症発症の10年以上前から始まると考えられており、PIB―PETはアルツハイマー型認知症の超早期診断、抗アミロイド療法の治療効果判定への有効性が期待されている。PIBは老人斑のアミロイドβ蛋白に特異的に結合するわけではなく、脳血管のアミロイドβ蛋白にも結合する。またレビー小体型認知症の80%においてPIBの高い結合がみられるとも報告されており、アルツハイマー型認知症の特異的診断ツールになるわけではない。しかし、従来の諸検査にて全く異常を指摘できない段階からアルツハイマー型認知症をとらえうる可能性もある。今回正常ボランティアでの高結合例がこれに相当するかどうかは、現段階では明らかではないが、今後のデータ蓄積と長期的な経過観察が必要である。

写真1
Fig.1 正常例のSUVR画像
写真2
Fig.2 アルツハイマー型認知症患者のSUVR画像
写真3
Fig.3 MCI患者のSUVR画像
写真4
Fig.4 アルツハイマー型認知症患者のSUVR画像